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セルフ塾は閉めましたが、そのままの名前でブログを続けます。独学,独習。教わるより,学ぶを重視。 セルフラーニングの方法,英語,数学などの情報を発信するつもりです。

日本語の豊かさ「女ことば」(三単現のsとの関連)
 三単現のsは,情報量を増やすことになるからあったほうがいいということを書きました。

 今回もそれに関連したことを書きます。

 日本語は,男か女か,若者か年寄りか,上司か部下かなどなどによって微妙にちがってきます。

 次は,夏目漱石の「三四郎」の一節です。

 女は美禰子

「じつは佐々木が金を……」と三四郎から言いだした。

「わかってるの」と中途でとめた。三四郎も黙った。すると

「どうしておなくしになったの」と聞いた。

「馬券を買ったのです」

 女は「まあ」と言った。まあと言ったわりに顔は驚いていない。かえって笑っている。すこしたって、「悪いかたね」とつけ加えた。三四郎は答えずにいた。

「馬券であてるのは、人の心をあてるよりむずかしいじゃありませんか。あなたは索引のついている人の心さえあててみようとなさらないのん気なかただのに」

「ぼくが馬券を買ったんじゃありません」

「あら。だれが買ったの」

「佐々木が買ったのです」

 女は急に笑いだした。三四郎もおかしくなった。

「じゃ、あなたがお金がお入用《いりよう》じゃなかったのね。ばかばかしい」

「いることはぼくがいるのです」

「ほんとうに?」

「ほんとうに」

「だってそれじゃおかしいわね」

「だから借りなくってもいいんです」

「なぜ。おいやなの?」

「いやじゃないが、お兄《あに》いさんに黙って、あなたから借りちゃ、好くないからです」

「どういうわけで? でも兄は承知しているんですもの」

「そうですか。じゃ借りてもいい。――しかし借りないでもいい。家《うち》へそう言ってやりさえすれば、一週間ぐらいすると来ますから」

「御迷惑なら、しいて……」



 会話だけがずらずらと続く部分があります。しかし,そのセリフはだれのものなのか,迷うことがありません。

 おなくしになったの・だれが買ったの・おかしいわね・おいやなの?・承知しているんですもの

 このような言葉遣いは,女性です。
 英語の場合はこのようにセリフだけを続けるとだれのセリフなのかよく分からなくなるそうです。だから,適当な箇所に「○○が言った」のような説明を加えなければいけなくなります。

 意味を伝えるのなら,男言葉,女言葉の区別は必要ありません。でも,それがあることは,日本語の豊かさだと思います。
 一時期は男女平等で,女言葉をなくそうという動きもあったように思いますが,平等か差別かは言葉の問題ではないと思います。

 女言葉が日本語の豊かさであるように,三単現のsも豊かさのひとつと考えていいのではないでしょうか。



 次は,三単現のsとは関係ないこと。

 ここに出ている
「索引のついている人の心さえあててみようとなさらないのん気なかた」
 という表現,とてもいいですね。


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