ここにp1344のtheの項からコピーします。前の記事もせっかくなので残しておきます。
the
不定冠詞a,anが名詞を具体化はしているが聞き手に対してはまだ特定のものにならないのに比べ,定冠詞theは,更にそれがさすものを特定のものに限定する.すなわちa,an が,問題のものが聞き手に未知なことを示唆するのに対して,theはなんらかの意味でそれが聞き手に既知であることを示唆する.「既知」の最も明瞭(めいりょう)な一例として,既出のものをさすばあいが考えられる:
I have bought a book and a dictionary.The dictionary is thicker than the book.私は本と辞書を買った.辞書は本より厚い.
theは日本語には訳されないことが多い。ときに「その」と訳すことはできるが,そのばあいの「その」は指でさし示す「その」でなく,すなわち「この」や「あの」に対比する「その」でないのは,ちょうどit の「それ」が「これ」「あれ」に対する「それ」でないのと平行する。ほんとうに直接さし示す「その」は thatである.なおtheはもともとthatと同類の指示詞から進化したもので,thatと密接な関係がある。
主語をなす名詞についたばあい,不定冠詞a,anと定冠詞theの含みが,しばしば日本語ではそれぞれ助詞「が」と「は」であらわされる: A bird came flying. The bird alighted on a twig.
烏が飛んで来た,鳥は小枝にとまった.
しかしこれは絶対のものではない.不定冠詞でも「は」になることがある: A horse is a noble animal. 馬は気品のある動物だ.・・・一方,次のように主語に特に強勢を置いて発音したときには、定冠詞でも「が」になる。The bird ate it.烏がそれを食べたのだ.
文英堂「理解しやすい英文法」には、
不定冠詞と定冠詞を比べると、次のようなちがいがある。
不定冠詞・・・はじめて話題となるもの、不特定のものに用いる。 数えられる名詞の単数形にのみつける。
定冠詞・・・既出のものや状況からそれとわかるもの、特定のものに用いる。
名手の種類や数に関係なく、どの名詞にもつけられる。
He has a son. The son is a doctor.
Please open the window.
とあります。分かる人は、そうだなと思うでしょうが、分からない人はこれでは分からないでしょうね。
また、定冠詞the は「その」、不定冠詞a(an)は「一つの」と訳しますが、それだけでは、絶対に対応することはできません。特に a は「一つ」というよりも、「どれでもいいから1つの」と不特定物を指す意味が強いのです。
日本語では、「その」「1つの」を省略した方が自然な表現になることが少なくないのです。
また、この定冠詞、不定冠詞はとても重要だそうです。
野口悠紀雄の著書の一つだったと思いますが、
ネイティブの人が「前置詞などは少々間違えても大丈夫ですよ」と言うので、「冠詞もそうですか?」と尋ねると、「いや、冠詞はきちんと使い分けなければいけない」と答えたそうです。
野口悠紀雄のどの本にあったか忘れてしまいました、少々あいまいですが、
さて、では、日本語には、冠詞(the, a )にあたるのがないのかといえばそうではありません。
講談社の英和辞書におもしろいのがありました。整理が悪いものですからその辞書を探し出すことができません。そのままここにコピーしたいのですができません。残念ですが、ぼくの記憶に残っている分にぼくの考えも加えて書きます。
theの項のコラムにあったものです。
日本語の助詞「が」「は」が定冠詞「a, the」に相当するというのです。もちろん、ぴったりというわけではないのですが。
「小鳥が飛んできました。小鳥は枝にとまり鳴き始めました」
自然な日本語ですね。
最初の文の主語「小鳥が」は、不特定の小鳥です。はじめて話題にのぼりました。どの小鳥かははっきりしません。どれでもいいから小鳥が飛んできたのです。a bird になりますね。日本語の表現では単数、複数は分からないのでbirdsかもしれません。
2番目の主語「小鳥は」では、1番目の「小鳥」のことです。つまり、飛んできた小鳥のことですよ、ということです。既出ということです。その場合には助詞の「は」を使います。the bird です。
文英堂の「くわしい国文法」に
副助詞「は」
意味(1)他と区別して、とくに取り出していう意味を示す。
(例) 私は行きません。
とあります。まさに定冠詞のtheだと思います。
もう一つ、桃太郎から
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山にしばかりに、おばあさんは川に・・・・
どうですか、ぼくらはまったく無意識に使っているのですが、助詞の「が」「は」をきれいに使い分けているのです。英語のネイティブの人もこのように無意識にa, the を使い分けているのでしょうね。