
フィードバックがどんなに強力なものなのかが分かる実験を紹介します。
まず2つの幾何的図形を準備します。この実験が書かれていた本をさがしたのですが,見つからないのでぼくが適当に描いてみました。
一人の人が図形の説明をして,その他の人がその説明を聴いて,その図を再現して描くというものです。
準備するのは鉛筆と紙。それと図形です。消しゴムもあった方がいいです。
説明をする人を「説明者」,その他の人を「図再現者」としましょう。
説明者は1回につき1人,図再現者は何人でもかまいません。
2回行います。「フィードバックなし」と「フィードバックあり」です。
「フィードバックなし」では,図再現者は「質問してはいけない」ということにします。説明者が一方的に説明を行い,図再現者は,その説明を聴くだけで,図形を再現しなければいけません。
「フィードバックあり」では,図再現者が質問をいくらでもしていいことにします。分からなくなったら,すぐに質問して詳しく説明してもらうことができます。何回質問してもかまいません。
2回のちがいはそれだけです。「質問なし」と「質問あり」です。
生徒に説明をさせる場合は,最初の「フィードバックなし」は一番説明がうまいと思われる生徒にさせましょう。
そして2回目の「フィードバックあり」は,2番目か3番目に説明の上手な生徒にさせてみましょう。
また,図形は同じ程度に複雑にすべきですが,同じ複雑さの2つの図形を描くのは難しいです。だから,フィードバックなしの方で単純だと思われる図形を使います。
「フィードバックあり」の方が成績がよくなるはずです。それを説明する人がよかったとか,図形が単純だったということにしてはいけないからです。
1回目が終わっても正解の図形は見せずに,2回目を行いましょう。1回目の図形を見せると,2回目の実験のヒントになります。1回目を行っただけでもヒントになりますが,まあそこはしようのないこととして。
この2つの違いは明白です。実験をしたらすぐに分かるはずです。
フィードバックなしでは,いくら上手に説明したと思っても,まず同じ図形は描けないはずです。
一方,フィードバックありでは,ほとんどの人が同じ図形を描けます。
フィードバックなしのとき,図再現者はいらいらします。うまく描くことができないからです。そのいらいらは説明者に伝わるかもしれません。1つのフィードバックです。それで説明を詳しくしようと思うのですが,どこをどうすればいいのか分かりません。
フィードバックありでは,活発な質疑がおこり,図再現者も楽しそうです。
「待って,待って,ひし形は縦と横,どこが長いの?」
「今言ったこと,もう一回言って」
「弧って何だったっけ?」などなど。
この実験をすれば,フィードバックありの授業をしなければいけないということがよくよく分かるはずです。
フィードバックありの授業とは,教師が行った授業を生徒がどのくらい理解しているのか,子どもたちの反応を気にする授業です。それについては次回に詳しく。
なお,これは厳密な心理学の実験ではありません。厳密にするためには,フィードバックあり,なし,以外は同じ条件にしなければなりません。それはめんどうです。研究ではないので,上の手続きくらいで理解できるはずです。
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