羽仁進の「自由学園物語」から抜粋します。その中の「僕」は小学1年生の羽仁進さんです。
僕は何とか質問を許された。
「リンゴ2つとリンゴ2つを足しても4になりますか?」と僕は言った。
「もちろんなりますよ」と先生は答えた。
「みかん2個にみかん2個を足しても4になりますか?」
「もちろんなりますよ」
先生はちょっとうんざりしたような顔をした。
「リンゴがなった4とみかんがなった4はどうやって見分けるのですか?」
「見分ける?」
「進君は、どうしてそんなことを聞くの?」
「僕はみかんは好きだけどリンゴはあまり好きじゃないんです。同じ4ならリンゴの4でなくみかんの4が欲しいんです。だけどその4をどうやって見分けたらいいかわからなくて・・・・。途中で印でも付けておくんですか?」
先生はしばらく黙って僕を見つめていた。
このような生徒がいると厄介でしょうね。 先生の気持ちがよくわかります。
もう40年ほど前に保育園をやっていました。その頃中沢和子さんの絵本「3・さん・みっつ」という絵本を買って子どもたちに与えました。
中身はとても単純です。
正確には覚えていませんが、例えば次のようなもの。
りんごの絵が3個描かれて、下に、「3・さん・みっつ」と書かれています。
次のページは、みかんが3個で、3・さん・みっつ
ネズミが3匹で、3・さん・みっつ
象が3頭で、3・さん・みっつ
要するに、「3」という数には、色も匂いも形も大きさも、そして味も関係ないのです。
それらを捨て去らなければいけません。難しい言葉で言うと「捨象」と言います。
好きなみかんも、嫌いなりんごも「3」なのです。 好きか嫌いかも捨てなければいけません。 その中の数と言う概念だけに着目して考えることができなければ算数はできません。
そういうところでつまずいていれば算数は前に進みませんね。
普通は3歳位で、3の概念が身につくと言われています。
言葉を覚え始め、1から10まで数えきれる子どもがいても、それはただ言葉を連ねているだけです。10までの概念ができたというわけではありません。
色も形も大きさも、そのものから切り捨てる作業が必要なのです。
切り捨てることのできない子どもがいる時には、面倒くさがらずに、数の概念をきちんとつかませる指導が必要なのでしょうね。
進少年は切り捨てることができていなかったのです。
それでも映画監督として成功したのですから、別の方面での能力が高かったということなんでしょうね。
アマゾンで調べると、
3・さん・みっつ (幼児のちえを育てる絵本 9) 単行本 – 1980/3/1
中沢 和子 (著), 冨田 百秋 (イラスト)
は、現在取り扱っていないとのことです。
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