きのう,受験生が1,2年の復習問題をやっていて,質問に来ました。
『次の図で,「つりあい」の関係にあるのは,どれでしょう,』という問題です。
「つりあい」と「作用・反作用」の区別はけっこうめんどうです。多くの参考書はかんたんに説明しているだけです。たぶん,あれだけで理解できる生徒はほんのわずかでしょう。
ちがいよりも似ているところが多いです。2つの力があるとき,
「つりあい」も「作用・反作用」も2力の大きさは「等しい」
「つりあい」も「作用・反作用」も2力の向きはどちらも「逆向き」
「つりあい」も「作用・反作用」も2力は一直線に並ぶ
だから,一見では分かりません。
違いは,その力が何に対して働いているのか,です。ここのところをかなり強調して教えてあげないと生徒は「つりあい」と「作用・反作用」の違いを理解してくれません。
(結論)
「つりあい」では,2つの力は同じ物体に働いています。
「作用・反作用」では,2つの力は異なる物体に働いています。
机の上に本があります。

A図では,地球が本を引いています(重力)。力は「本」に働いています。
そして,机が本を押しています(垂直抗力)。力は「本」に働いています。
どちらも「本」に力が働いています。
これが,「つりあい」です。
B図では,本が机を押しています(重力の移動)。力は「机」に働いています。
そして,机が本を押しています(垂直抗力)。力は「本」に働いています。
ひとつの力は「机」に,別の力は「本」に働いています。
これが,「作用・反作用」です。
「作用・反作用」では,
AがBに力をおよぼし,
BがAに力をおよぼす。 というように,主語と目的語が逆の関係にあります。
さて,きのう生徒が質問に来た問題の図は次のものです。

下からいきます。
(力)オは「地球」が「おもり」を引いています。重力です。
この図には出ていませんが,「おもり」が「地球」を引く力もあります。この2力は「作用反作用」です。
「地球」が「おもり」に作用
「おもり」が「地球」に作用 逆の関係にありますね。
(この場合,どちらが「作用」でどちらが「反作用」かのちがいはないと思います)
(力)オのそばに「おもり」と書きます。力がおもりに作用しているからです。
さて,その力が移動して,(力)エになります。エはおもりが糸を引いています。エのそばに「糸」と書きます。
(力)ウは,糸がおもりを引く力です。
ウとエは,
おもりが糸に作用し,
糸がおもりに反作用というように逆の関係なので,「作用反作用」です。
(力)アは,天井が糸を引く力。
(力)イは,糸が天井を引く力。
逆の関係なので,アとイは作用反作用です。
作用したものを書き込んだ図は次のようになっていますね。

アとエの力はふたつとも「糸」に作用しています。この2力は「つりあい」の関係にあります。
ウとオの力はふたつとも「おもり」に作用しています。この2力は「つりあい」の関係にあります。
この本は「セルフ塾のブログ」の記事の中から、中学理科(物理)に関するものを集めたものです。
『次の図で,「つりあい」の関係にあるのは,どれでしょう,』という問題です。
「つりあい」と「作用・反作用」の区別はけっこうめんどうです。多くの参考書はかんたんに説明しているだけです。たぶん,あれだけで理解できる生徒はほんのわずかでしょう。
ちがいよりも似ているところが多いです。2つの力があるとき,
「つりあい」も「作用・反作用」も2力の大きさは「等しい」
「つりあい」も「作用・反作用」も2力の向きはどちらも「逆向き」
「つりあい」も「作用・反作用」も2力は一直線に並ぶ
だから,一見では分かりません。
違いは,その力が何に対して働いているのか,です。ここのところをかなり強調して教えてあげないと生徒は「つりあい」と「作用・反作用」の違いを理解してくれません。
(結論)
「つりあい」では,2つの力は同じ物体に働いています。
「作用・反作用」では,2つの力は異なる物体に働いています。
机の上に本があります。

A図では,地球が本を引いています(重力)。力は「本」に働いています。
そして,机が本を押しています(垂直抗力)。力は「本」に働いています。
どちらも「本」に力が働いています。
これが,「つりあい」です。
B図では,本が机を押しています(重力の移動)。力は「机」に働いています。
そして,机が本を押しています(垂直抗力)。力は「本」に働いています。
ひとつの力は「机」に,別の力は「本」に働いています。
これが,「作用・反作用」です。
「作用・反作用」では,
AがBに力をおよぼし,
BがAに力をおよぼす。 というように,主語と目的語が逆の関係にあります。
さて,きのう生徒が質問に来た問題の図は次のものです。

下からいきます。
(力)オは「地球」が「おもり」を引いています。重力です。
この図には出ていませんが,「おもり」が「地球」を引く力もあります。この2力は「作用反作用」です。
「地球」が「おもり」に作用
「おもり」が「地球」に作用 逆の関係にありますね。
(この場合,どちらが「作用」でどちらが「反作用」かのちがいはないと思います)
(力)オのそばに「おもり」と書きます。力がおもりに作用しているからです。
さて,その力が移動して,(力)エになります。エはおもりが糸を引いています。エのそばに「糸」と書きます。
(力)ウは,糸がおもりを引く力です。
ウとエは,
おもりが糸に作用し,
糸がおもりに反作用というように逆の関係なので,「作用反作用」です。
(力)アは,天井が糸を引く力。
(力)イは,糸が天井を引く力。
逆の関係なので,アとイは作用反作用です。
作用したものを書き込んだ図は次のようになっていますね。

アとエの力はふたつとも「糸」に作用しています。この2力は「つりあい」の関係にあります。
ウとオの力はふたつとも「おもり」に作用しています。この2力は「つりあい」の関係にあります。
この本は「セルフ塾のブログ」の記事の中から、中学理科(物理)に関するものを集めたものです。
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Comment

ご指摘、ありがとうございます。訂正いたしました。
selfyojji | URL | 2014/11/22/Sat 10:24[EDIT]

垂直効力ではなく、垂直抗力ではないでしょうか?
| URL | 2014/11/22/Sat 09:13[EDIT]

selfyojji | URL | 2014/06/23/Mon 09:09[EDIT]

疑問に思ったことがあります。
地球が本を引いています(重力)と、本が机を押しています(重力の移動)の違いが全くわからないです。どちらでもとらえることができるのではないでしょうか
地球が本を引いています(重力)と、本が机を押しています(重力の移動)の違いが全くわからないです。どちらでもとらえることができるのではないでしょうか
JPEG | URL | 2014/06/23/Mon 00:02[EDIT]

始めまして。これを見て疑問に思ったことがあったのですが、
この例の(力)イは糸が天井を引く力ですよね。
しかしこの場合天井はたぶん動いてないと思うので、
天井でも何か力が釣り合ってると思うのです…。
天井では何の力が釣り合ってるのでしょうか。できれば教えてほしいですm(--)m
この例の(力)イは糸が天井を引く力ですよね。
しかしこの場合天井はたぶん動いてないと思うので、
天井でも何か力が釣り合ってると思うのです…。
天井では何の力が釣り合ってるのでしょうか。できれば教えてほしいですm(--)m
TS | URL | 2014/06/12/Thu 16:13[EDIT]

コメントありがとうございます。ぼくのブログがお役に立ったのであればうれしいです。
selfyojji | URL | 2014/01/27/Mon 01:35[EDIT]

ばねの問題を質問した者です。
丁寧でわかりやすい説明ありがとうございました!
最近問題をやっていると、どうでもいいことですぐに疑問が生じてしまいなかなかはかどりません(笑)
丁寧でわかりやすい説明ありがとうございました!
最近問題をやっていると、どうでもいいことですぐに疑問が生じてしまいなかなかはかどりません(笑)
| URL | 2014/01/26/Sun 23:25[EDIT]

selfyojji | URL | 2014/01/24/Fri 11:51[EDIT]

天井から垂直にばねがつるしてあって、先端におもりがついている。
ばねが自然の長さより短くなるよう板でおもりを支えた。
この時の、すべての物体に働く力を図示せよ。
という問題です。
お手数ですが解説していただければ有り難いです。
ばねが自然の長さより短くなるよう板でおもりを支えた。
この時の、すべての物体に働く力を図示せよ。
という問題です。
お手数ですが解説していただければ有り難いです。
| URL | 2014/01/23/Thu 23:28[EDIT]

selfyojji | URL | 2013/11/12/Tue 16:41[EDIT]

こんにちは♪テストが近いのですが、理科で疑問に思ったところがあります。教えてほしいです。
1、どういう場合に等速直線運動をするのですか。摩擦があるところで、するときはあるのですか。
2、ふりこの問題でおもりを落とし始めた高さより最高点が高くなっていました。斜面で球体を転がしたときは、落とし始めた高さと最高点が同じになるのに、ふりこの時は違うのですか?
3、仕事の原理は物体の重さが同じで持ち上げる高さが同じ時のみ成り立つ、という解釈であっていますか?
説明が分かりにくくてすみません…以上の3つです。
宜しくお願い致します。
1、どういう場合に等速直線運動をするのですか。摩擦があるところで、するときはあるのですか。
2、ふりこの問題でおもりを落とし始めた高さより最高点が高くなっていました。斜面で球体を転がしたときは、落とし始めた高さと最高点が同じになるのに、ふりこの時は違うのですか?
3、仕事の原理は物体の重さが同じで持ち上げる高さが同じ時のみ成り立つ、という解釈であっていますか?
説明が分かりにくくてすみません…以上の3つです。
宜しくお願い致します。
みるく | URL | 2013/11/11/Mon 19:27[EDIT]

とおるさま、コメントありがとうございます。
さて、ご質問の件です。
運動している物体が、ほかの物体にぶつかるとき
そのそのような現象をあつかうときには、「運動量」という概念が必要になります。運動量とは、質量×速さのことです。
その運動量というのは保存されるという「運動量保存の法則」があります。
これについては高校の物理で学びます。中学の範囲ではありません。
僕は高校生の時に、物理が好きで、この運動量保存の法則を扱った問題は楽しく解いた記憶があります。
ビリヤードの玉のように、まっすぐに別の球にあたると、運動してきた玉は止まり、ぶつかった球が同じ速さで動きます。
このようなことを、運動量保存の法則を使うと計算できます。
ただ、いろいろな条件があります。ビリヤードの玉などは反発係数が1に近いです。
それに対して粘土のようなものは、反発せずにぶつかったものにくっついて動き出します。
高校の物理では反発係数が1の理想的な状態として計算したように思います。
ご質問によると、摩擦も計算に入れて考えてみたいよようですね。
単純な質問のようですが、いろいろな条件を考えると、それにお答えするのは単純ではありません。
運動量保存の法則と摩擦力が結びついた問題を解いた覚えがありません。
もちろん、ご質問にあるように、他の物質に結び付いた時にぶつかったものも動き出し、それは摩擦によって運動量が失われていくはずです。
それがどのようになるのか、難しい問題になります。
面白い問題で、いいご質問だと思います。
ただ、僕はそういう方面をきちんと学んだわけではないので、仮説に仮説を重ねたような説明になってしまいます。
そういうわけで、ご質問の件は、中学生を教えている僕の力を超えたものになっているように思います。
それで、ここでお答えすることはできません。
せっかく御質問いただいたのですが、ご理解ください。
さて、ご質問の件です。
運動している物体が、ほかの物体にぶつかるとき
そのそのような現象をあつかうときには、「運動量」という概念が必要になります。運動量とは、質量×速さのことです。
その運動量というのは保存されるという「運動量保存の法則」があります。
これについては高校の物理で学びます。中学の範囲ではありません。
僕は高校生の時に、物理が好きで、この運動量保存の法則を扱った問題は楽しく解いた記憶があります。
ビリヤードの玉のように、まっすぐに別の球にあたると、運動してきた玉は止まり、ぶつかった球が同じ速さで動きます。
このようなことを、運動量保存の法則を使うと計算できます。
ただ、いろいろな条件があります。ビリヤードの玉などは反発係数が1に近いです。
それに対して粘土のようなものは、反発せずにぶつかったものにくっついて動き出します。
高校の物理では反発係数が1の理想的な状態として計算したように思います。
ご質問によると、摩擦も計算に入れて考えてみたいよようですね。
単純な質問のようですが、いろいろな条件を考えると、それにお答えするのは単純ではありません。
運動量保存の法則と摩擦力が結びついた問題を解いた覚えがありません。
もちろん、ご質問にあるように、他の物質に結び付いた時にぶつかったものも動き出し、それは摩擦によって運動量が失われていくはずです。
それがどのようになるのか、難しい問題になります。
面白い問題で、いいご質問だと思います。
ただ、僕はそういう方面をきちんと学んだわけではないので、仮説に仮説を重ねたような説明になってしまいます。
そういうわけで、ご質問の件は、中学生を教えている僕の力を超えたものになっているように思います。
それで、ここでお答えすることはできません。
せっかく御質問いただいたのですが、ご理解ください。
selfyojji | URL | 2011/09/10/Sat 11:50[EDIT]

とってもわかりやすい説明で、感服しました!!
ただ、私の知識足りずで摩擦が入るとうまくいかず、よろしければ追加説明をいただけますでしょうか。
たとえば、以下のようにボールが転がってきて木片にぶつかった場合ですが、
パターン1:ボールは止まり、木片も静止状態
パターン2:ボールは止まり、木片が反動で滑っていった
パターン3:木片がボールを止きれず、ボールはまだ転がり、木片はボールに押されていった。
と、3つのパターンが考えられるかなと思ってます。
作用・反作用は等しく、つり合いが取れていない場合の考え方になるかと思いますが、作図をするとどのようになりますでしょうか?
お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
ただ、私の知識足りずで摩擦が入るとうまくいかず、よろしければ追加説明をいただけますでしょうか。
たとえば、以下のようにボールが転がってきて木片にぶつかった場合ですが、
パターン1:ボールは止まり、木片も静止状態
パターン2:ボールは止まり、木片が反動で滑っていった
パターン3:木片がボールを止きれず、ボールはまだ転がり、木片はボールに押されていった。
と、3つのパターンが考えられるかなと思ってます。
作用・反作用は等しく、つり合いが取れていない場合の考え方になるかと思いますが、作図をするとどのようになりますでしょうか?
お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
とおる | URL | 2011/09/09/Fri 23:00[EDIT]

お役に立てたようで、うれしく思います。テスト、がんばってください。
selfyojji | URL | 2011/06/26/Sun 22:35[EDIT]

テスト範囲でわからなかったところを説明していただき本当にありがとうございました。
名無し | URL | 2011/06/26/Sun 16:35[EDIT]

さよりさん
コメントありがとうございます。
ほめられるとやはりうれしいです。また、がんばって書こうという気になりますね。
コメントありがとうございます。
ほめられるとやはりうれしいです。また、がんばって書こうという気になりますね。

とても、お役に立ちました!
わからない所がおかげで、わかるようになりました!
これからも、このようなホームページを開いていってください!!!
わからない所がおかげで、わかるようになりました!
これからも、このようなホームページを開いていってください!!!
さより | URL | 2010/12/14/Tue 22:31[EDIT]

機械のアッシュ(仮)さま
コメント、ありがとうございます。つりあいと作用、反作用、区別は難しいようです。分かってしまえばたいしたことないのですが。
> この説明は分かりやすい。素晴らしい。初めて理解できました!
selfyojji | URL | 2010/09/04/Sat 19:41[EDIT]

この説明は分かりやすい。素晴らしい。初めて理解できました!
機械のアッシュ(仮) | URL | 2010/09/04/Sat 01:05[EDIT]
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