「分かる」と「できる」
糸山 泰造 著「絶対学力」では,できることより,分かることをかなり重視しています。以下,絶対学力からの引用です。
絶対学力―「9歳の壁」をどう突破していくか?
飛躍できない子供たちの存在を見えなくしている原因は「分かっていなくても、できるようにさせられてしまっている」ことにあります。「できれば分かる」という宣伝文句に乗せられて手順だけを覚えて条件反射的に答えを出し、「できたできた、ドンドン進め」とやっているうちに、分かっていないことが山積みになり、取り返しかっかないことになってしまうのです。
「できたから先に進む」は「高度な学習への移行」を意味してはいません。それどころか、新しい手順を覚えるという最も貧弱な学習を数多くしているだけです。これは多くの人たちが勘違いしている点です。できても分かるようにはならないのです。
「分かっていないのにできる」子供にしたい親などいないはずです。ですが、小学校では個々の子供の理解度を確認してはくれません。そこで計算がスラスラとできたり、漢字を多く書けたりすると、即ち学力が高いと親は勘違いしてしまうのです。そして、この盲点をついて盛んに行われているのが考えない学習の代表である反射式プリントです。この種のプリントは分かっていなくてもてきるようにすることを目的に作られていますので、大変危険です。もちろん「分かっていないのにできるようになります」とは書いてありません。「できるようになるだけで、分かるようにはならないプリントを使っています」とも書いてありません。「できれば分かるようになる」という解説を読んで、親がそう思い込んでいるだけなのです。
ですから、いつまで経っても分かるようにはならないのです。また、「分かっていないのにできる」状態になると、本人までもが分かっていないのに「分かっている」と思ってしまいます。これでは自発的な学習はいつまで経ってもできません。
私は「分かっていないのにできる」よりも「分かっていないならできない」方がずっといいと思います。なぜなら、病気なのに症状が出ないことほど恐ろしいことはないではありませんか。癌でさえも早期発見すれば治療できるのです。遠出をする時に、ガソリンが減るのを見たくないからと言って、車のガソリンメーターに目隠しをする人がいるとは思えません。親がすべきことは、目先の結果を気にして「できる」ことを追うのではなく、子供が本当の自信を持って生きていくことができるように「考える力」を育ててあげることなのです。
※注 反射式プリントとは「考える」という頭の活動を経由せずに条件反射的な反応を育成するためのプリントを指します。つまり、問題を解く場合に、その問題の意味を理解して答えを出すのではなく、問題の中にあるキーワードや数字に反応して機械的に(自動的に)知っている手順を実行することで答えてしまう習慣を付けるものです。例えば、文章問題の中に3と8という数字かあると、文章の意味を考えずに足したり引いたり掛けたり割ったりと裏付けのない計算をします。反射式は反復式のー種ですが、一般的な復習を目的としたものとは構造的に異なっており、反射式の中に「考える」という要素は入っていません。逆に「考えさせない」ことが反射式の主要素なのです。
(引用終わり)
ぼくも「分かる」ことがとても大切だと思っています。ぼくの数学のテキストを見た人が「(理解することに)こだわりすぎているんじゃないか」と言っていました。
確かにこだわりすぎていると思っています。数学ではとにかく理解することに重点をおくべきだと思います。そういう意味で糸山さんと同じです。
上の「反射式プリント」というのは,たぶん公文式のことでしょうね。
ぼくも,できればいいとは思いません。
ただ,少し違うかもしれないと思うのは,生徒が十分に理解できないときにどうするか,です。
ぼくは,理解できないときは,理解はできなくても計算はできるようにして,先に進みます。
例えば,なぜ分数のわり算では,分子と分母をひっくり返してかけるのか,より分からないとします。そういう場合には,いまは理由は分からなくてもいいから,計算はできるようにしよう,と言って,「分数のわり算はひっくり返してかける」という操作を覚えさせ,とにかく進みます。
ぼくのテキストでは,分数のわり算がなぜひっくり返してかけるようになったのか,きちんと説明しているつもりです。でも,それはかなり難しいです。
そういうときにどうするかです。みなさんはどう思いますか。
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こちらこそ,いつもコメント,ありがとうございます。

わかったことは覚えますし応用が利きます。
中学の文章題(割合がらみ)になるとわからないと解けないものも増えます。そこでとければいいのあてずっぽう型思考と、納得型思考との差が見えてきますね。
いつも役に立つ記事をありがとうございます。勉強になっております。
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